治療院経営成功の実学

自由診療を増やす非常識な王道

治療の回数券の落とし穴

自由診療を増やそうとした時に、多くの先生が考えるのが、「回数券」です。

回数券にすることで、患者さんは少しお得な金額で治療を受けることができ、治療院としてはリピーターが作れるし、まとまった売上が上がりますから、当然と言えば、当然のことです。

 

でも、回数券は諸刃の剣。

確かに、患者さんにも治療院にもメリットがあるのですが、使い方を間違えると、逆に患者さんが流出したり、治療院に対して悪い噂が流れることになってしまいます。

◘治療の回数券は他とは違う

珈琲やランチなどの回数券と、治療の回数券は、同じ回数券ですが、ちょっと違います。

何が違うのかと言うと、「利用するシーン」です。

 

珈琲やランチに対する欲求は日常的に高まりますが、治療の欲求が高まるのは症状がある時だけ。すがすがしく目覚めた朝に、「よし、今日は体調もいいし、お昼に治療でも受けに行くか!」とはならないわけです。

 

つまり、治療の回数券は、症状が治まると必要が無くなる。

これが、日常的に欲求が高まる他の商品やサービスとの大きな違いです。

 

話は飛びますが…。

患者さんによって、求める治療結果のレベルは違います。

多少痛みがあったとしても、日常生活に支障が無くなればいいという人もいれば、再発しないように時間がかかっても根本まで治したいという人もいます。ちなみに、体験的に理解されていると思うのですが、前者は男性が多く、後者は女性に多い傾向があります。

 

前者の場合、回数券を販売しておいても、治療途中で流出ことがあります。

回数券を購入していても、患者としては、自分が望む治療結果を手に入れたのですから、来院しなくなるのは当然です。

 

そして、患者さんは思うのです。

「必要のない回数券を買わされた」と。

 

このようなことにならないためには、初診の段階で、「症状が治まる=治った」ではないこと。そして、「根本まで治すことの必要性」をきちんと説明しておくことです。

 

◘人間は自己正当化をする

別の理由で、治療途中で離脱する患者もいます。

予約を入れていたのに、忘れていたか、急な用事が入って、予約を守ることができなかった。しかも、行けないことの連絡も入れていない。

こうなると、バツが悪くなって、来院しづらくなってしまうんですね。それが2度目とか、3度目とかになると、良識のある人ほど、その思いは強くなります。

 

そんな状態で、症状が楽になっていると、「痛みもほとんど収まっているし、生活に不便も無くなっているから、もう行かなくていいかぁ」となってしまうんです。

 

ところが、手元には治療の回数券が残っている。

この場合、来院しなくなったのは、患者の責任です。

でも、人間は自分が間違えたことをした(自分が悪い)と思いたくない心理を持っているので、治療途中で自分が離脱したのに、生活に不便が無い程度治っていれば、「必要のない回数の回数券を買わされた」となってしまいやすいのです。

 

これを防ぐには、回数券を購入したのに途中で離脱した患者に、月に一度、来院を促すフォローのハガキを出しておくこと。ハガキの文面は、体調を心配していることが伝わる内容にするのがポイントです。

そういったハガキを毎月出しておくと、患者は、通院してないのは自分の責任だと認識するので、患者都合の離脱が苦情になることが無くなるのです。

人は何に価値を感じる?

「1万、2万、5万の3治療メニューを作れというけど、百歩譲って1万円の治療はまだいいとして、2万円とか、5万円の治療なんて受けてくれる人いるの?」と不安になっている先生もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

結論から言うと、大丈夫です。

実際、一回数万円の治療費で治療を行っている先生は、世の中にたくさんいます。

 

「それは、特別な治療技術を持っている先生だけでしょ」

 

いえいえ、そんなことはありません。

高額の治療を行っている先生が、特別な技術を持っているというのは思い込みです。「高い治療費=特別な治療であるはず」という公式を持っているので、そんな風に考えてしまうのです。

出典:photoAC


◘高額の治療院の共通点

高額治療の治療院に共通しているのは、「特別な技術」を持っていることではなく、「コンセプト」が明確なところ。

 

治療と言うものは目に見えないサービスです。

しかも、患者さんは、治療技術のことを詳しく知りません。「この治療技術は、こういう症状に有効」「この治療ができる先生は、これくらいの腕前だ」なんてことを知っている患者さんはいません。

 

もし、患者さんが、治療について詳しければ、治療方法や治療技術と価格を見比べて、この治療院は安い、この治療院は高いと考えることができるかもしれません。

でも、患者さんは、治療のことについて知らないので、コンセプト(専門性を含む)と実績(患者さんの声など)でしか判断できないのです。

つまり、コンセプトが魅力的で実績があれば、治療費は高くて当然だと思うということ。

だから、コンセプトを決め、それをしっかり患者に伝えていけば、数万円くらいの治療メニューなら、そんなに心配しなくても購入してもらうことはできるのです。

 

◘人はディテールに価値を感じる

人は、ディテール(細部)に価値を感じます。

適切な例えではないかもしれませんが、同じお酒でも、普段着を着た女性が継いでくれるのと、ドレスを着た人が継いでくれるのでは感じる価値が変わります。当然、高いお金を支払うのは後者です。

高級品が、パッケージにこだわるのもこのため。お菓子でも、お酒でも、時計でも、高級品が商品を入れている箱にお金をかけるのは、人がディテールに価値を感じるからです。

逆に言うと、どんな高級な腕時計であったとしても、ビニール袋に入れて売られていたら、感じる価値は下がってしまうのです。

 

これは、治療にも当てはまります。

・治療院の外観

・待合などのポスターや置物

・清潔感を感じる治療空間

・ユニフォームのデザイン

・マッサージベッドのカバーが上質

・頭の下に引くタオルの質

・治療後に出てくる健康茶の味

そういった治療を取り巻くディテールを整えると、患者様は価値を感じ、「良い治療を受けている=高くて当然」と感じるのです。

 

高額治療を販売するからと言って、必ずしも、高級なディテールにする必要はありません。

そうではなく、コンセプトに沿ったディテールにすること。例えば、スポーツ外傷に特化をしているのなら、スポーツに関するポスターを張り出したり、グッズを展示したり、特定の選手が愛用しているタオルを使ったりするわけです。

 

そうやってコンセプトに沿ってディテールを整えると、コンセプトが世界観となって患者さんに伝わり、魅力を感じてもらいやすくなるのです。

魅力を感じるほど、価格に対する抵抗感は低くなりますから、販売しやすくなるんですね。

 

【価格に対する感覚】

・魅力>金額 :安い

・魅力<金額 :高い

 

自由診療の治療メニューを作る

では、1万、2万、5万の3つ治療メニューの内容を考えていきましょう。

数千円で自由診療を行っている先生に、「1万、2万、5万円の治療コースを考えましょう」と提案をしたとき、最初にイメージされるのが、治療費を上げるのなら、その金額に見合った「新しい治療技術の習得」をするか、「治療時間を長くする」です。

でも、新しい治療技術を習得する必要はありませんし、時間も、例えば、1万円の治療が1時間なら、2万円の治療は2時間と言った具合に、治療費と比例して増やす必要はありません。

◘治療メニューの素材を洗い出す

治療メニューは、新しい治療技術を習得したり、新しい機器を導入するのではなく、治療メニューは、今持っているリソース(資源)を組合わせて作ります。

「先生が習得している治療技術」「治療に付随する知識」と「自院にある機器や設備」を紙に書き出して、持っているリソースを視覚化します。

これは、料理を作る時も、機械を組立てるときもそうですが、材料や素材を目に付くように並べることで、「これとこれを組合わせれば、これができるな」という発想がしやすくなるからです。

出典:photoAC

◘治療メニューを組立てる3つの視点

治療メニューの組み立て方は、「症状」「技術」「プラスオン」の3つ視点で考えると考えやすくなります。

この3つの視点は、治療メニューの組立てを考えやすいように分類したもので、3つの視点が明確に分かれているわけではありません。ですから、実際に自由診療メニューを組立てるときは、一度、それぞれの視点で考えてみて、それを組わせることでメニューを決めていくようにしてください。

◇症状の視点

症状によって治療費を分ける視点です。

症状が重篤になればなるほど、それを治療するには、より専門的な知識や技術が必要になります。それに、治療時間も長くなるかもしれません。

病院でも盲腸の手術と心臓の手術では手術費は異なるのですから、治療院でも症状によって治療費が高くなっても問題ありません。

例えば、1万円は、慢性的な肩こりや腰痛といった一般的な症状。そして、重篤な症状は、2万円、5万円にするという感じで、治療メニューを考えてみます。

 

◇技術の視点

治療に使用する技術数で治療費を分ける視点です。

治療家の先生は勉強熱心で、いくつかの治療方法と、それに伴うテクニックを習得されていると思います。そして、症状によって、いくつのテクニックを使うのかは異なるはず。

技術は目に見えないものですが、その習得には時間とお金がかかっています。つまり、治療家にとって技術は原価のかかった原材料で、この原材料を使って治療という商品を提供しているわけです。

世の中でも、たくさんの原材料を使ったり、高い原材料のものを使った商品は高額になります。ですから、使用する治療テクニックの数で治療費が異なるのは当然のことなのです。

例えば、治療テクニックを10個持っているとして、1万円は3テクニックまで、2万円は5テクニックまでという感じで、治療メニューを考えてみます。

 

◇プラスオンの視点

プラスオンとは、治療に何かをプラスするかで治療費を分ける視点です。

例えば、姿勢矯正なら1万円。それに、セルフケアをするための動的ストレッチや、歩き方の指導などを加えると2万円。スポーツ障害の治療なら1万円。それに、ランニングの仕方や、トレーニング方法の指導を加えると2万円と言った具合にです。

プラスオンできるのは、治療に付随する知識だけではありません。治療機器を加えることもできますし、動きやすいカラダを作る筋膜リリースとゴルフのスイング分析をする機械を組合わせている治療院もあります。

◘柔軟に思考してみる

視覚化した「先生が習得している治療技術」と「自院にある機器や設備」を見ながら、「症状」「技術」「プラスオン」の3つ視点で考えて、自由診療メニューを組立てていきます。

例えば、1万円はオーソドックスな治療。2万円はパーキンソンに特化した治療。5万円は、医療機器や指導を加えた内容にする…と言った感じで、「症状」「技術」「プラスオン」を組合わせ、治療メニューを組立てもいいでしょう。

そうやって考えると、どの治療院でも、1万、2万、5万円の治療メニューを考えることは難しくありません。

重要な部分なので繰り返しますが、治療メニューは、今ある資源を使ってできるものを作ること。高額であったとしても、その魅力を伝えることができれば、自由診療を受ける患者を増やすことはできますので、まず、自院で販売する治療メニューを組立てましょう。

 

治療費が安くても増患はできない

「ホームページに掲出している自由診療の治療費が、安いほど患者に選ばれやすくなる」

自由診療の治療費は安いほど、来院した患者に自由診療を受けてもらいやすくなる」

そんな風に考えている治療家の先生は少なくありません。

 

確かに、どんな商品やサービスでも「安さ」は大きな魅力のひとつで、消費行動のトリガーを引く大きな要素。同じものなら、できるだけ安く買いたいというのは、ほとんどの人が持っている欲求です。

でも、この欲求、実は例外があります。

健康や命、人生にかかわるものに関しては、「安い」ということは魅力を感じないどころか、不審がられることもあるのです。

出典:photoAC

◘安さゆえに顧客を失った治療院

うちの奥さんは、妊娠中、ツワリや疲労感がきつくて、マタニティ鍼灸をしてくれる治療院を探していました。

ある時、治療院のホームページを見せながら、私に「ねぇ、この治療院ヤバいと思えへん?」と聞いてきたのです。その治療院は、比較的自宅から近く通いやすい立地。ホームページの作りもキレイで、安心を感じるデザインです。

 

「何がヤバいの?」

「だって、ここ、1回の治療費が6,000円やで。しかも、ネットから申し込んだら、初回割引で3,000円になるんやって。絶対、治療の技術に自信が無いんやわ」

そして、結局彼女が選んだのは、自宅から少し距離があり、通うのにはちょっと不便な、1回のマタニティ鍼灸の治療費が12,000円の治療院だったのです。

「妊娠中やし、なんかあったら怖いから、ちゃんとした値段のところに行くわ」というのが彼女の意見でした。

 

これは、うちの奥さんだけの意見ではありません。

自由診療の治療費を10,000円に上げた治療の先生から、患者に「何故、当院を選ばれましたか?」と聞いたところ、「この辺で一番高かったので、絶対治してくれると思って来た」という報告が多かったといった報告を受けることは珍しくないからです。

 

「100円均一ショップと、500円均一ショップの、どちらの方がいい商品が並んでいる?」と質問をすれば、全ての人が500円均一だと答えるでしょう。治療に限らず、全ての分野で、「価格=品質レベル」だというイメージをほとんどの人は持っています。

だから、安さを打ち出すと信用を失うこともあるのです。

 

◘安さで売れるのは日用品

実は、安さが購買決定要因になる代表格は、健康や命、人生に深い関係の無い、洗剤類、ティッシュ、スポンジ、掃除用品、トイレットペーパーといった、いわゆる日用品の消耗品。これは、安くすればするほど売れます。

でも、それ以外のものになると、基本的には、安いというだけでは、売れるようになりません。

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治療に限らず、消費者が、商品やサービスを選ぶとき、必ずと言っていいほどKBF(購買決定要因)のいくつかが満たされている必要があり、安さはその中の一つの要素に過ぎないので、安くしたからといって売れるようにはならないのです。

これは、治療費の安い治療院だから流行っているとは限らない。そして、治療費の高い治療院だから、閑古鳥が鳴いているとは限らない…という現実を見ても理解していただけると思います。

 

安くすれば自由診療を受けてくれる患者が増えるはずだ…と言うのは妄想から抜け出し、きちんと儲かる料金設定にすることが大切なんですね。

自由診療は「1:2:2.5」の3つを作る

さて、先回は、価格設定の大切さを知っていただくために、「自由診療の計算式」について解説させていただきましたが、一般の治療院であれば、「1:2:2.5」で3つの料金帯を作り、そこから治療コースを考えていきます。

 

「1:2:2.5」とは、例えば、Aコース:1万円、Bコース:2万円、Cコース:5万円という感じで、Aコースを1万円にしたら、Bコースをその2倍、CコースをBの2.5倍で価格設定をするのです

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◘治療費の基本は1万円から

私は、これまで20年近く治療院の先生に売上アップのアドバイスをしてきましたが、基本は「1万、2万、5万の3つのコース」を作ることを提案しています。

何故なら、自由診療の計算式でいちいち計算しなくても、最低料金のコースを1万円に設定しておけば、ほとんどの治療院で「経営が成り立つ」と「儲かる」の基準を満たした治療費になること。

 

それから、1万円のコースなら、今の延長線で治療内容を考えることができますが、2万円や5万円を支払っても満足する治療コースとなると、既成概念を捨てないと考え付くことができません。だから、高い治療費を先に設定すると、既成概念にとらわれない自由な思考が広がりやすくなるのです。

 

1万、2万、5万のコースを作るメリットは他にもあります。

1万、2万、5万の3つのコースを並べると、1万円の治療費が安く感じます。

それに、松竹梅のように3つのコースがあると人は真ん中の竹を選びやすい傾向があるので、2万円のコースも受ける人が出てきます。

5万円のコースは、1万、2万円のコースが売れやすくするための、いわば「見せ商品」ですが、このコースを頼む人も出てきます。1回5万円の治療が決まれば利益率は一気に上がります。

 

そして、何よりの最大のメリットは、先生や治療院をブランド化できるということです。

 

◘治療費を上げるとブランド化される

先生は、「5千円で治療をしています」という治療家Aと、「5万円で治療をしています」という治療家Bでは、どちらが治療の腕前が良いと思いますか?

ほとんどの方が、治療家Bだと答えると思います。

 

あらゆる分野で「販売価格=商品やサービスの品質のレベル」だと、ほとんどの人は考えています。

千円のバッグより、1万円のバッグの方が品質はいいと思うし、100万円のクルマより1000万円の車の方が走行性も安全性も高いと思うものなのです。

 

治療も同じで、自由診療を5千円で行っている先生のことは、5千円の治療技術しか持って無いと思うし、5万円の治療も行っている先生のことは、それだけ高い治療技術を持っていると思うのです。つまり、治療メニューの中に5万円のコースを入れておくと、「凄い先生だ」と思われブランド化される。

 

A.5千円の治療しかできない先生の3千円の治療

B.5万円の治療の腕前を持っている人の1万円の治療

本気で治したいと思っている人は、どちらを選ぶと思いますか?

当然、Bですね。

このように、治療コースに中に高額治療を入れておくことで、患者の信頼を獲得するだけでなく、他の治療院より選ばれやすくなるのです。

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自由診療は治療費から考える

自由診療のメニューを作る時、ほとんどの先生は、まず、自由診療の内容を決め、それから、治療費を決めていると思います。

そして、治療費を決めるときの基準で多いのが「施術時間」と「他院の治療費」ですね。

 

つまり…。

治療を行うのに30分の時間を取られるのなら、これくらいの治療費が欲しいという希望。

もしくは、30分の施術時間なら他はこれくらいでやっているとか、同じ症状の治療を他院ではこれくらいでやっているという、他院との比較で治療費を決めているわけです。

でも、この思考プロセスで考えていくと、自由診療を増やすのも、売上を伸ばしていくのも難しくなります。

何故なら、どうしても競合と同じような治療内容を、同じような金額帯で販売することになりやすいので、たくさんある治療院の中から患者様に選ばれづらくなるからです。

 

自由診療を増やし、売上を伸ばすなら、まず、治療費を決め、そこから治療内容を考えるというプロセスで思考すべきなのです。

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◘治療費の計算式

自由診療の費用は、「施術時間」や「他院の治療費」を基準にするのではなく、「経営が成り立つのか」と「儲かるのか」を考えて決めていきます。

 

まず、経営が成り立つかどうかについてですが…。

治療院を維持していくには、地代家賃や光熱費、通信費、リース料など、毎月かかる費用をきちんと支払うことが必須です。

それから、どんなに好きな仕事でも、収入が無ければ続けることはできませんから、先生の給与もこの中に入ります。

 

次に、儲かるかどうかですが…。

売上を伸ばしていくには新規患者の獲得が必須になります。この集客のための費用を治療費の中に入れます。

あと、患者のフォローをしたほうが、離脱率が下がり、売上は安定しながら伸ばしていくことができますので、その費用も、治療費の中に入れる。

 

そのためには、例えば、固定費が20万円で、欲しい収入が50万円だったとすると、合計で70万円。この「固定費+収入」をベースに、新規患者獲得費を20%、患者フォロー費用を10%、プラスします。

【計算式①】売上目標

・20万+50万+20%(14万)+10%(7万)=91万円

 

営業日数が20日で、1日8時間営業。1人の患者の治療時間が1時間だと、予約がすべて埋まれば、月に160人の患者を診ることができる計算になります。

【計算式②】1か月に治療できる患者数

20日×8人=160人

 

予約の70%埋まった状態で、売上目標を達成できるように治療費を算出します。

【計算式③】治療費

・160人×70%=112人

・91万÷112人=8,125円

 

つまり、上記の条件なら、自由診療の治療費を8,000円以上に設定すればいいのです。

治療家の先生の中には、驚くことに「なんとなく」で治療費を決めている方もいらっしゃいます。

京セラの稲森和夫氏は、「販売価格とは戦略である」と言っていますが、同じ商品やサービスでも価格の設定によって儲かったり、儲からなかったりします。

ですから、感覚で決めるのではなく、「経営が成り立つのか」と「儲かるのか」の基準で、きちんと計算して決めるべきなのです。

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◘儲かるための費用は固定費

「新規の患者を集める」と「リピート患者を増やす」の2つができると患者数は増えていきます。

 

なんとか経営を成り立たせるために必要な「固定費」と「人件費」を稼ぐことができたとしても、次の売上を作り出すのに必要な新規患者を集めることができなかったり、既存の患者がどんどん離脱していくでは、すぐに経営は苦しくなります。

 

そんな状態にならないようにするには、「新規の患者を集める」と「リピート患者を増やす」ための費用を、「変動費」ではなく、「固定費」として捉え、毎月一定の金額を投資していくこと。

そして、そのためには、治療費の中に、この二つに投資するための費用を入れておく必要があるのです。

治療院のコンセプトを作る④ コンセプトを決定する

コンセプトは、直訳すると「概念」「全体を貫く基本的な観点・考え方」です。

概念ですから、どうしても抽象的なものになります。スターバックスのコンセプトの「サードプレイス(Third place)」も、それだけを聞いたら、抽象的過ぎて何のことか分かりませんよね。「サードプレイス=家庭でも職場でもない第3の空間を提供する」という補足説明があって、「あぁ、そういう意味か!」と言うのが理解できるのです。

それにしても、「サードプレイス」って、言いたいことを短い言葉で上手く纏めていますよね。

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自院のコンセプトを作る時、スターバックスのようにうまく纏める必要はありません。

大切なのは、カッコいいかどうかではなく、ちゃんと使えるコンセプトになっているかどうかだからです。

コンセプトは、「経営判断をする時の基準」、「患者様に魅力(他院との違い)を伝える」のに必要なものでしたよね。その使い方ができれば、カッコよく纏まっていなくてもいいのです。

 

◘コンセプト=テーマ×約束で考える

コンセプトは、「テーマ」と「約束」に分けると作りやすくなります。

 

「テーマ」とは、主題。自院で実現しようとしていること。

そして、「約束」とは、そのテーマを実現するための、患者との約束です。

テーマはひとつですが、テーマを実現する約束は3~5つくらいあると分かりやすいです。

このテーマと約束を、ここまで書き出した「自院独自の強み」「やっていきたいこと」「ベネフィット」を見ながら考えていきます。

《例①》

●テーマ:根本から健康な体で快適な人生を楽しむ

●約束:

①主訴ではなく、主訴を起こしている根本から治療を行う

②問診、動作確認を行い、体の状態を納得できるまで説明

③日常生活でのセルフケアの方法を提案

④プライバシーの守られた空間で施術

⑤定期メンテナンスでカラダの歪みを改善

 

《例②》

●テーマ:生涯、スポーツを楽しむを応援する

●約束:

①メインはスポーツ障害・スポーツ外傷の治療

②筋膜リリースで動きやすいカラダをサポート

③基本的な体の使い方・動かし方の指導

④ランニングのトレーニング方法の提案

⑤メンタルのサポート(考え方など)

 

上記の例は、ベネフィットから考えたテーマにしてありますが、猫背矯正、産後の骨盤矯正、睡眠障害と言った症状を特化し、それをテーマにするのもありです。

 

◘コンセプトは変更してもいい

コンセプトは、一度、作ると、生涯それを守り続けないといけないものではありません。

実際にそのコンセプトでやってみて、上手く行かなければ変更してもいいですし、逆に、上手く行くことでコンセプトを進化させるという意味で変更をすることもあるかもしれません。

真面目な先生ほど、「完璧なコンセプトを作らなければ…」という思いに囚われて、コンセプト作りができなくなる傾向があるのですが、あまり硬く考えないで、フィーリングで決めるくらいの感覚でコンセプトは決めるようにしましょう。

 

コンセプトが決まると、何をやって何をやらないでいいのか。患者様に何を伝えればいいのかが明確になるので、治療院経営が非常にスッキリし、売上を伸ばすことに力や時間を集中できるようになります。