メンタルブロックを外す最強の方法
メンタルブロックは、自分で作り上げた思い込みに過ぎない。
そんな事は分かっていても、なかなか完全に心の中から払しょくするのが難しいのが、メンタルブロックでもあります。
「メンタルブロックが無くなれば、行動を起こせるようになる」と思っている人がいるのですが、それは誤解です。そして、この誤解を持っていると、少しでも心に引っかかりがあると行動を起こせなくなってしまうのです。
メンタルブロックを克服するには、メンタルブロックの正しい解消の仕方を知ればいいんですね。
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【メンタルブロックの解消の仕方】
①メンタルブロックをざっくり外す
②ミニマムな行動を起こす
③結果を受け入れる
◘ステップ1:メンタルブロックをざっくり外す
メンタルブロックは、カラダに巻き付いた鎖のように、その人が行動を起こそうとした時、
それを抑制します。
でも、鎖の全部を外さなくても、動きは限定されますがカラダを動かすことができますよね。
それと同じように、メンタルブロックもすべて解消する必要はありません。ある程度、行動を起こせる範囲まで外せばいいのです。そして、その程度のメンタルブロックなら、ここまで読み進めることで外れているはず。
次のステップに進んでいきましょう。
◘ステップ2:ミニマムな行動を起こす
メンタルブロックを解消する最強方法は、実は、行動を起こすことなのです。
「メンタルブロックがあるから行動を起こせない」のに、「メンタルブロックを外すには行動を起こすこと」などと言うと矛盾しているように感じるかもしれませんが、メンタルブロックの本質は、未知の領域に踏み出すことの恐怖です。
経験してしまうと、それは、未知の領域ではなくなります。だから、メンタルブロックを外す最も効果的な方法は、実際の行動を起こすことなのです。
ある程度、メンタルブロックが外れた状態になると、大きな行動は起こせないかもしれませんが、小さな行動なら起こすことができます。ですから、最もミニマムな行動を思い切って起こしてみるのです。
今回で言えば、ミニマムな行動は、1万円、2万円、5万円のコースを作り、料金表を張り出すこと。たったそれだけのことです。
◘ステップ③結果を受け入れる
おそらく、最初に売れるのは、1万円の治療。
1度の治療で1万円を受け取るなんて、あなたにとっては未知の体験です。きっと、感動するでしょう。
でも、人間は、高い環境適応能力を持っているので、どんなに大きな感動も、数回も体験すると、すぐに慣れてしまいます。そして、慣れてしまえばメンタルブロックは完全に解消されるのです。
大切なのは、未知の体験をしたとき、その結果を素直に受け入れること。自分の治療で、この金額を貰ってもいいんだ!と受け入れることで、未知の領域が普通のことに変わっていくのです。
「案ずるより産むが易し」と言いますが、物事はあれこれ心配するより、実行してみれば案外たやすいものです。このシンプルな3つのステップで、メンタルブルックは完全に解消し、高額治療に行こうしていきましょう。
高額治療への移行の仕方
さて、この段階で、心に引っかかるものがあるとするなら、それは、「急に値段を上げたら、一気に患者さんが流出するのではないだろうか…」という不安だと思います。
確かに、治療費を上げると、既存の費用に魅力を感じていた患者さんは流出します。それに、既存の患者さんが流出したからと言って、新しい高額治療の患者さんを集客できるわけでは無いでしょうから、どうしても、一定期間売上は下がってしまうので、不安を感じて当然です。
既存患者の流出と、新規患者の集客までのタイムラグによる売上の低下を、どうやって乗り越えるのか。これが高額治療に移行するときの経営上の天王山になるのです。
◘移行方法① 既存の患者さんはそのまま
既存患者の流出と、新規患者の集客のタイムラグによる売上低下を防ぐ一番の方法は、既存の患者様は既存の料金で、新規の患者さんは新たな料金にすることです。
これなら、既存の患者が流出することは無くなるので、タイムラグによる売上低下自体が無くなります。
新料金にする前に、既存の患者さんに、今度、料金変更をすること、でも今、来ていただいている患者さんは、これまでの料金で治療を受けられることを、口頭だけでなく、チラシを作って手渡し、しっかり訴求しておくようにしましょう。そうすることで、治療院の前の看板の料金表を新料金に変えたとしても、安心して来院していただけるようになります。
ただ、この方法のデメリットとして、質の悪い患者さんが残ってしまうというのがあります。
◘移行方法② 期間を設定する
既存の患者さんは、既存の料金のまま治療を行いますが、その期間を限定します。
例えば、現在、5,000円で自由診療を行っているのであれば、既存の患者さんは、向こう半年間、既存の料金で受けることができる。でも、その期間を過ぎれば、新料金で治療を受けてもらうという形ですね。
この方法でも、既存患者の流出と、新規患者の集客のタイムラグによる売上低下をしっかり防ぐことができます。
もちろん、この場合も、新料金にする前に、既存の患者さんには口頭だけでなく、チラシなどを作って手渡し、訴求をしておくようにしてください。
この方法のメリットは、設定期間が終わると、質の悪い患者さんがいなくなること。デメリットは、設定期間が終わったタイミングで売上の低下が起こることですが、それまでに新規の患者さんを集客しておけば、この売上の低下による経営への負担は少なくすることができます。
◘移行方法③一気に料金変更
既存の患者さんも、新規の患者さんも、同じタイミングで値上げをする方法。
この場合も、既存の患者さんには、いつから治療費が変わるのかを口頭だけでなく、チラシなどを作って手渡して、しっかり訴求をしておきます。
既存患者の流出と、新規患者の集客のタイムラグによる売上低下は確実に起こるので、その期間を貯蓄などで耐える必要があります。ただ、その期間中に、患者の質を一気に変えることができるというメリットが有ります。
◘どの方法がベター?
どの以降方法を選ぶのかは先生の自由ですが、リスクの低さを優先するなら①か②、体力があるのなら③を選ぶといいでしょう。
①か②で、既存患者の流出と新規患者の集客までのタイムラグによる売上の低下を低いレベルに抑えれば、経営に大きな影響を受けることなく、高額治療に移行することができます。
治療費の中に広告費とフォロー費を入れる
販売価格は一般的には「原価+経費+利益」で計算し決定します。
治療家の場合、治療技術を習得するためにかかった費用が、原価になるわけですが、販売するたびに仕入れる必要のある商品と違って、一度、習得すると何年何十年と使うことができるので、ついつい、ざっくりとした計算で治療費を決めてしまう場合が多いのです。
治療費を決めるときに、絶対に経費の中に入れておいたほうが良いのが、「広告費」と「フォローの費用」。この2つを入れておかないと、売上が落ちやすくなるし、打ち上げが落ちた時に、にっちもさっちもいかなくなるからです。
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◘広告費は固定費
新規の患者さんを集客するためには、広告は欠かせないものです。
上手く行かない経営者は、広告費を変動費として捉えています。変動費とは、売上や販売数に比例して増減する経費のこと。つまり、上手く行かない人は、売上を増やしたい時だけ広告費をかけているわけです。
でも、上手く行っている経営者は、ほぼ例外なく、広告費を固定費として捉えています。広告媒体は、チラシであったり、ミニコミ誌であったり、ネットであったりするのですが、毎月決まった金額を広告に使っているのです。
何故なら、広告費は、出したからと言ってすぐに反応が出るものではないから。
例えば、チラシを一度ポスティングしたからと言って、ほとんどの場合、反応はありません。
少し話は飛びますが、ザイアンスの法則をご存じでしょうか?
ザイアンスの法則とは、人や物、サービスに何度も触れることで警戒心が薄れていき、関心や好意を持ちやすくなるという心理的な効果のことで、関心や好意は接触回数と比例します。
つまり、1度だけチラシをポスティングしても反応しませんが、複数回、ポスティングをしていくと、徐々に反応が出てくるということです。
これは、チラシだけじゃなく、他の広告媒体でも同じ。だから、広告費を固定費として捉え、毎月、着実に広告を出している治療院の方が、集客に成功しているのです。
◘フォローの費用も固定費
1.誕生日に何もしてこない治療院
2.誕生日にバースデーカードを送ってくれる治療院
3.誕生日に花束を贈ってくれる治療院
もし、先生が患者の立場なら、どの治療院のファンになりますか?
当然、3の治療院ですよね。
これは、誕生日の話だけではありません。マーケティングで一番、お金がかかるのは集客です。でも、せっかく、大枚をはたいて集客しても、きちんとフォローしておかないと患者さんは簡単に流出していきます。
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ところが、安い値段で治療を行っていると、忙しくしている割に利益が少ないので、患者さんのフォローにお金や時間をかけることができないのです。
フォローにかかる費用は、利益の中から絞り出す必要はありません。
そもそも、治療費の中にフォローにかかる費用を入れておけば、ストレスなくフォローに費用をかけることができるようになるのですから。
◘実は計算しなくても…
治療費を決めるとき、「原価+経費+利益」の経費の中に、広告費とフォロー費用を加えておくことで、安定して患者数を集客し、集客した患者さんの流出を防ぐことができるようになります。
広告費は、売上が少ない時は、月に1万円でも2万円でもいいですので、続けることのできる金額を設定しましょう。
最終的には、売上(治療費)の10~15%は広告費にするべき。例えば、月に100万円の売上が目標なら、最終的には10~15万円が広告費になります。100万円を達成した時の患者数で広告費を割って、治療費の中に入れるようにします。
フォロー代は、どんな内容にするのかで違ってくるので、フォローの内容を決めて、それを患者数で割って、治療費の中に入れます。蛇足ですが、SNSでのフォローなどは外注することもできますので、自分でできない時は、この外注費もフォロー代の中に入れておきましょう。
ただ、現時点で、広告費やフォローの費用を入れて計算するのは、ちょっと難しいかもしれません。それなら、広告費やフォローの費用を入れても十分に利益を確保できるくらいの治療費に設定すればいいのです。つまり、高額に設定しておけば、わざわざ計算しなくてもいいんですね。
治療費を上げるとみんながハッピーになる
治療費を上げることを妨げている最大の原因は、未知の領域に踏み出すメンタルブロック。
治療費を上げることで、「既存の患者に嫌われたらたらどうしよう」「新規の患者さんが来なくなったらどうしよう」「上手く行かなかったらどうしよう」という不安が頭をかすめて踏み出すことができなくなるのです。
もし、治療費を上げることで、既存の患者さんに好かれ、新規の患者さんも獲得ができ、色んな事が上手く行くことが確約されていたら、誰だって喜んで値上げをしますもんね。
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◘メンタルブロックの正体
新たな行動を起こすことで、どこかに歪みが発生する。その歪みが、誰かに不利益をもたらすかもしれない…と思った時に、メンタルブロックは発生します。
例えば、治療費を上げることで、既存の患者さんに迷惑がかかるかもしれない…となると、ブロックがかかるわけです。
これが、メンタルブロックの正体です。
でも、ちょっと考えてみると分かるのですが、メンタルブロックって、思い込みに過ぎないんですよね。だって、治療費を上げると、患者さんが迷惑と感じるってのだって、自分の思い込みですよね。実際、治療費を上げたら、患者さんから「前から安すぎると思っていたの」という声を頂いたという先生は少なくないのです。
思い込みという名の呪縛から解放されるには、歪みは無いということを認識すること。
自分の中の思い込みなので、自分の認識を変えることで、メンタルブロックを解消することができるのです。
そして、歪みは、「個人」「周りの人」「より全体」の3つの利益が相反すると思った時に感じます。例えば、自分(個人)は治療費を上げたいけど、それによって周りの人(患者さん)が不利益を被るとなると、歪みを感じるわけです。
ちょっと心理学の話になりますが、多くの人は、「個人」と「その他(周りの人、より全体)」の利益は相反するという価値観を持っています。
これは、そういう教育を受けてきたから。例えば、「自分のことばかりを考えちゃダメ」「そんなことをしたら、みんなに迷惑をかけるでしょ」「皆のために、ちょっと我慢しようよ」といったものです。それに、全体のために犠牲になった人の話を美談として教えられることもあります。
もちろん、そういった教育は、集団生活をする中で大切な価値観です。でも、そういった価値観を持つと、「自分が良くなることで、周りも良くなる方法は無いだろうか?」と考えることができなくなってしまうんですね。
本当に治療費を上げると、「個人」「周りの人」「より全体」のどこかに歪みが発生するのでしょうか?
◘治療費を上げると先生は幸せ?
例えば、現在、5,000円で行っている治療を、10,000円に上げたとします。
単純に計算すると、売上も収入も倍になりますよね。
売上が倍になれば、欲しかった医療機器を導入するなど、設備を充実させることができるでしょうし、内装を変えたり、パウダールームを作ったりして、患者さんに喜んでもらえる治療院にすることができるでしょう。
収入が倍になれば、趣味に使えるお金も増えるし、未来への備えである貯蓄も増やすことができます。それに、収入が倍になれば、休みだって今より増やせるようになります。つまり、自分の自由な時間を増やすことができるのです。
これって、先生にとってハッピーなことですよね。
◘治療費を上げると周りの人は幸せ?
先生の周りの人とは、家族、スタッフ、患者さんです。
倍の収入を持って帰ったら、奥さんは嫌がるでしょうか?いえいえ、喜びますよね。
子どもは、習いたいことを習ったり、遊びにも連れて行ってもらえるから喜ぶでしょう。
売上が増えれば、スタッフの給料を上げたり、福利厚生を充実させてあげることができます。それって、スタッフにとっては嫌なことでしょうか?喜ぶはずです。
では、患者さんは、どうでしょう。
人は、お金をかけたものほど大切にします。毎月、数千円を健康に投資している人と、数万円を投資している人なら、カラダを大切にするのは後者です。
そのため、高額治療を受けている人は、先生が、こうしたほうが良いというアドバイスをよく聞きます。「半身浴をしたほうが良いですね」「ストレッチをしたほうが良いですね」「生活リズムを少し見直してみましょうか」といったアドバイスをすると、それを受け入れて実行しようとするのです。
自宅でセルフケアをする人と、しない人。どちらが早く治るのかは言うまでもありませんね。つまり、治療費を上げると、患者さんは早く健康を取り戻すことができるのです。
早く健康を取り戻すことができて、嫌がる人はいませんよね。
つまり、治療費を上げると、家族も、スタッフも、患者さんもハッピーになれるのです。
◘治療費を上げると、より全体は幸せ?
より全体とは、業界や地域のことです。
いつの時代も、若い世代に人気があるのは高収入の職種。治療家の年収が増えれば、若い世代の優れた人財が治療業界に入ってくるようになります。そうなると、治療業界は活性化します。
優れた若い世代が集まれば、たくさんのイノベーションが起こり、業界自体が発展し、社会的な地位も上がるのです。
それに、健康に対して意識の高い人が増えれば、地域の医療費は下がります。
治療費が社会問題のひとつになっている現代において、これは、大きな地域への貢献でもあります。
このように、治療費を上げると、業界や地域もハッピーになれるのです。
◘上手く行く人の秘密
治療費を上げると、「個人」「周りの人」「より全体」の全てがハッピーになることは理解してもらえたでしょうか。
どの業界でも、上手く行く人は、この3つの利益が一致しています。自分が良くなることが、周りや全体が良くなることと一致しているので、歪みが生じず、メンタルブロックが無いのです。
すると、未知の領域に踏み出すことに戸惑わないし、自分の能力を思いっきり発揮できるので上手く行くんですね。
治療費を上げることにどうしても抵抗がある…という先生は、治療費を上げることで、自分自身、周りの人々、より全体にどんな利益をもたらすことができるのかをイメージして、紙に書き出してみてください。
PS.
中世から近代にかけて、大坂商人、伊勢商人と並ぶ日本三大商人として活躍した近江商人が、「売手善し、買手善し、世間善し」の三方善しを商売哲学としていたのは有名な話。
売手も、買手も、世の中も、善くすることを信条にしていたから、近江商人にはメンタルブロックが無く、能力をいかんなく発揮できたので、発展したんですね。
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治療費を上げると患者の質が変わる
安くないと治療を受けない患者さんと、高くても治療を受ける患者さんは、「質」が異なります。どちらの患者さんを増やしていくのかは、経営者である先生が決めていいこと。
でも、どんな質の患者さんを増やしていくのかで、経営の仕方は異なってくるので、その違いを知った上で判断するようにしたいものです。
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◘健康への関心度が高い
人はお金があるから高いものを購入するのではなく、自分が興味を持っていたり、関心度が高いモノに高くてもお金を支払います。例えば、どんなにお金を持っていても、食に関心が無い人は高級料理店には行きませんが、一般的な収入でも、食に関心がある人は、他のものを節約してでも高いお店に食事に行くのです。
これは、治療にも、そのまま当てはまります。
安い治療しか受けない人は、自分の健康に関心や興味が少ないことが多く、高額の治療を受ける人は、自分の健康に興味や関心を持っていることが多いのです。
前者は、例えば、「カラダが冷えているようなので、半身浴とかしてみたらいいですね」「軽いストレッチと化したほうが良いですよ」などとアドバイスをしても言うことを聞きません。
それに、治療途中でも、生活に支障が無くなれば簡単に流出します。そして、また、症状がひどくなってから訪れるので、治療に手間がかかるのです。
一方、健康に興味や関心を持っているので、先生の言うことを素直に聞いてくれますし、治療途中での離脱も少ない場合が多いのです。
◘予約を守る
人は、自分がたくさんのお金を使っているものほど大切にします。
10万円で購入したパソコンと、20万円で購入したパソコンがあれば、後者の方を大切にする。利用料の高いグランピング施設でゴミのポイ捨てをする人はいませんが、無料で花見ができる公園にはゴミが散らかっていたりするのは、このためです。
保険を取り扱っている先生なら、保険の患者さんに限って「仕事が遅くなったので…」と、診察時間が終わってからやってくるのを経験したことがあるでしょう。自由診療でも、安い治療費でやっている先生は、予約を無断キャンセルされた経験があるはず。
安い治療を受けている人は、治療院を大切にしようとしません。そのため、この世なことを平気でやってしまうのです。
一方、高額の自由診療を受ける人は、お金を使っているので治療院を大切にしようとします。だから、予約の時間をきちんと守りますし、無断キャンセルなどもほとんどないのです。
◘クレームが少ない
他の業種の方に確認していただければ分かりますが、苦情を言ってくる人で多いのは、安い商品を購入した人です。それに、無理な要求をしてくるので多いのも、安い商品を購入した人。
逆に、高額商品をポンと購入した人は、苦情を言ってきたり、無理な要求をしてくることはほとんどないと教えてくれるはずです。
治療でも同じで、低額の治療を受けている人ほど、不満を持ったり、無理なことをお願いしてきます。一方、高額の治療費を支払う患者さんが苦情や無理難題を言ってくることはほとんどありません。
このように、安い治療を受ける人と、高い治療でも受ける人では質が違います。
高い治療費でも治療を受けるのは、「健康への関心度が高い」「時間を守る」「クレームが少ない」患者さんです。
治療費を上げると患者さんが流出する…というのは事実ですが、正しくは、治療費を上げると質が低い患者さんが流出し、代わりに、質の高い患者さんが入ってくるようになるのです。
どちらの患者さんを増やすのかは、先生が決めることですが、治療費が高い患者さんを増やした方が、治療院経営のストレスは少なくなります。
間違えた気遣いを捨てる
治療費を上げる際の一番の障害。それは、自分の中にあるメンタルブロックです。
「治療費を上げると患者さんに迷惑をかけてしまう」と思っている先生は少なくありませんが、その理由をお聞きすると、「治療費を上げたら、治療が必要な患者さんが治療を受けることができなくなるじゃないですか…」と言うのです。
これは、一見、優しい気遣いのように見えるのですが、本当に、そうなのでしょうか…
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◘財布の中身を心配するのは失礼
では、ちょっとイメージしてみてください。
例えば、先生が、結婚10周年の記念日に夫婦でホテルに食事に行ったとします。
メニューを見ながら、「これ、美味しそうね」「これもいいかも」「見て見て、このデザート」と注文する料理を決め、ソムリエに相談して料理に合うワインも決めた。
料理を待ちながら、思い出話や子供の話で盛り上がっていると、ふと、目に入った隣の席の料理がすごく美味しそう。
どうしても食べたくなったので、ウェイターを呼んで、小声で隣の方が食べている料理の名前と、メニューのどの辺に載っていたのかを聞いてみたら、「お客様にお渡ししたメニューには、あの料理は載っていません」というではないですか。
「なんで、僕たちのメニューには載っていなかったんですか?」
「あの料理は少しお高いので、お客様には支払えないかと思いまして、載せてないメニュー表の方をお渡ししました」
さて、先生はどう思うでしょうか?
A.財布の中身まで心配してくれるなんて、なんて親切なお店なんだ!
B.なんて失礼なお店なんだ!料理を食べるお金くらい持っているよ!
私ならBです。
見た目で勝手に財布の中身まで判断されたことに憤慨し、二度とその店にはいかないでしょう。
◘高いか安いかを決めるのは患者さん
治療に限らず、どんな商品やサービスであっても、それが高いか安いのかを最終的に決めるのは買手です。
売手が「この商品がこの価格で購入できるなんて、めちゃくちゃ安い」と思っていても、買手は「高い」と判断することもあるでしょうし、逆に、売手は「ちょっと高いかなぁ」と思っていても、買手は「リーズナブル!」と判断することもあります。
売手ができるのは、商品の魅力や必要性と、その料金を伝えることだけで、それを超えて、買手が判断する領域に踏み込むことは、失礼なことなのです。
一生懸命、気遣っているのに、相手には失礼だと嫌われてしまうなんて喜劇ですよね。
そんな事にならないためには、間違えた気遣いを捨て、売手は売手の領域でやるべきことに集中し、買手の権利は侵さないようにすることなんですね。
治療費の値上げができない原因
これまで、たくさんの治療家の先生と話をしてきましたが、「治療費を上げたいですか?」と質問すると、ほぼすべての先生が、「そりゃ、上げたいですよ」と答えてくれました。
「じゃぁ、明日から治療費を上げる方法を教えましょう」
「どうすればいいんですか?」
「今日、治療院に帰ったら、今の治療費に二本線を引いて、その上に10,000円と書けばいいんです」
そんな風にアドバイスをすると、皆さん、「そんなバカな…」という表情をされるのですが、これ、別にからかって言っているわけではありません。
自由診療を上げる最大のポイントは、このアドバイスのように、思い切って上げることなのです。(もちろん、値上げ後も増患していくためには、ここまでお話ししてきたような準備をしておくことが必要ですが…)
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でも、これができない先生が多い。
真面目に働いている、治療技術にも自信がある、既存の患者様には評価されている。でも、実際に治療費を上げるとなると、ためらってしまうのです。
治療費を上げることができない理由をお聞きすると、よく出てくるのが次のようなもの。
・既存の患者さんに迷惑をかけてしまう
・富裕層が少ない地域だから
・同業が、同じような価格帯でやっているから
・値上げをすると、師匠の先生より高い料金になるから
でも、実は、これらは本当の理由ではありません。
多くの先生にとって、一番安い治療費が10,000円と言うのは未知の領域。
未体験の領域に踏み出すには、誰だって怖いもの。だから、もっともらしい理由を並べているだけなのです。
だって、「既存の患者さんに迷惑をかけてしまう」と言うのなら、新規の患者さんから値段を上げた新料金にして、既存の患者は既存の料金のままにすればいいだけですし、「富裕層が少ない地域だから」と言っても、治療は、嗜好品などと違って、お金があるから高いものを受けるという類のものではないからです。
治療費を上げることを妨げている最大の原因は、未知の領域に踏み出すメンタルブロック。これを解決しない限り、どんなに治療の腕前を高め、たくさんの人に評価をされたとしても、治療費を上げることは難しいのです。
◘治療費は一気に上げる
治療費を上げる提案をすると、よく出てくるのが、「少しずつ上げたらダメでしょうか?」という質問。
例えば、5,000円で治療を行っているなら、いきなり10,000円にするのではなく、6,000円、8,000円、10,000円とステップを踏みながら、徐々に治療費を上げたいというのです。
一度に治療費を上げるより、少しずつ上げたほうが、患者さんが感じる負担が少なく、流出を防げるはず…と考えるようなのですが、残念ながら、そうはなりません。
一気に上げようが、少しずつ上げようが、治療費を上げると患者さんは流出します。
世の中には、金額が一番の判断基準と言う人が一定数いて、そういうタイプの人は、治療や治療院のことがどんなに気に入っていたとしても、値上げをすると流出してしまうのです。
もちろん、「高い!」と感じる金額には個人差があって、そのラインを超えると流出するので、いくら上げた段階で流出するのは分かりません。
6,000円が高いという感覚の人もいれば、8,000円が高いという感覚の人もいて、10,000円が高い日と言う感覚の人もいます。
5,000円から6,000円に上げると、6,000円が高いという感覚の人は流出します。
患者数が減った分を、一生懸命集客でカバーして元と同じ患者数に戻したとしても、8,000円に上げると、「6,000円ならいいけど、8,000円は高い」という感覚の人が流出します。
そうやって患者数が減った分を、一生懸命カバーして、元と同じ患者数に戻したとしても、10,000円に上げると、「8,000円ならいいけど、10,000円は高い」という感覚の人が流出します。
つまり、徐々に上げると、その度に、せっかく手間暇をかけて集客した患者さんが流出し、また、集客をし直さないといけなくなるのです。
それなら、一気に10,000円に上げて、その金額でも治療を受けるという患者さんを集客したほうがいいのです。