間違えた気遣いを捨てる
治療費を上げる際の一番の障害。それは、自分の中にあるメンタルブロックです。
「治療費を上げると患者さんに迷惑をかけてしまう」と思っている先生は少なくありませんが、その理由をお聞きすると、「治療費を上げたら、治療が必要な患者さんが治療を受けることができなくなるじゃないですか…」と言うのです。
これは、一見、優しい気遣いのように見えるのですが、本当に、そうなのでしょうか…
出典:photoAC
◘財布の中身を心配するのは失礼
では、ちょっとイメージしてみてください。
例えば、先生が、結婚10周年の記念日に夫婦でホテルに食事に行ったとします。
メニューを見ながら、「これ、美味しそうね」「これもいいかも」「見て見て、このデザート」と注文する料理を決め、ソムリエに相談して料理に合うワインも決めた。
料理を待ちながら、思い出話や子供の話で盛り上がっていると、ふと、目に入った隣の席の料理がすごく美味しそう。
どうしても食べたくなったので、ウェイターを呼んで、小声で隣の方が食べている料理の名前と、メニューのどの辺に載っていたのかを聞いてみたら、「お客様にお渡ししたメニューには、あの料理は載っていません」というではないですか。
「なんで、僕たちのメニューには載っていなかったんですか?」
「あの料理は少しお高いので、お客様には支払えないかと思いまして、載せてないメニュー表の方をお渡ししました」
さて、先生はどう思うでしょうか?
A.財布の中身まで心配してくれるなんて、なんて親切なお店なんだ!
B.なんて失礼なお店なんだ!料理を食べるお金くらい持っているよ!
私ならBです。
見た目で勝手に財布の中身まで判断されたことに憤慨し、二度とその店にはいかないでしょう。
◘高いか安いかを決めるのは患者さん
治療に限らず、どんな商品やサービスであっても、それが高いか安いのかを最終的に決めるのは買手です。
売手が「この商品がこの価格で購入できるなんて、めちゃくちゃ安い」と思っていても、買手は「高い」と判断することもあるでしょうし、逆に、売手は「ちょっと高いかなぁ」と思っていても、買手は「リーズナブル!」と判断することもあります。
売手ができるのは、商品の魅力や必要性と、その料金を伝えることだけで、それを超えて、買手が判断する領域に踏み込むことは、失礼なことなのです。
一生懸命、気遣っているのに、相手には失礼だと嫌われてしまうなんて喜劇ですよね。
そんな事にならないためには、間違えた気遣いを捨て、売手は売手の領域でやるべきことに集中し、買手の権利は侵さないようにすることなんですね。