治療費が安くても増患はできない
「ホームページに掲出している自由診療の治療費が、安いほど患者に選ばれやすくなる」
「自由診療の治療費は安いほど、来院した患者に自由診療を受けてもらいやすくなる」
そんな風に考えている治療家の先生は少なくありません。
確かに、どんな商品やサービスでも「安さ」は大きな魅力のひとつで、消費行動のトリガーを引く大きな要素。同じものなら、できるだけ安く買いたいというのは、ほとんどの人が持っている欲求です。
でも、この欲求、実は例外があります。
健康や命、人生にかかわるものに関しては、「安い」ということは魅力を感じないどころか、不審がられることもあるのです。
出典:photoAC
◘安さゆえに顧客を失った治療院
うちの奥さんは、妊娠中、ツワリや疲労感がきつくて、マタニティ鍼灸をしてくれる治療院を探していました。
ある時、治療院のホームページを見せながら、私に「ねぇ、この治療院ヤバいと思えへん?」と聞いてきたのです。その治療院は、比較的自宅から近く通いやすい立地。ホームページの作りもキレイで、安心を感じるデザインです。
「何がヤバいの?」
「だって、ここ、1回の治療費が6,000円やで。しかも、ネットから申し込んだら、初回割引で3,000円になるんやって。絶対、治療の技術に自信が無いんやわ」
そして、結局彼女が選んだのは、自宅から少し距離があり、通うのにはちょっと不便な、1回のマタニティ鍼灸の治療費が12,000円の治療院だったのです。
「妊娠中やし、なんかあったら怖いから、ちゃんとした値段のところに行くわ」というのが彼女の意見でした。
これは、うちの奥さんだけの意見ではありません。
自由診療の治療費を10,000円に上げた治療の先生から、患者に「何故、当院を選ばれましたか?」と聞いたところ、「この辺で一番高かったので、絶対治してくれると思って来た」という報告が多かったといった報告を受けることは珍しくないからです。
「100円均一ショップと、500円均一ショップの、どちらの方がいい商品が並んでいる?」と質問をすれば、全ての人が500円均一だと答えるでしょう。治療に限らず、全ての分野で、「価格=品質レベル」だというイメージをほとんどの人は持っています。
だから、安さを打ち出すと信用を失うこともあるのです。
◘安さで売れるのは日用品
実は、安さが購買決定要因になる代表格は、健康や命、人生に深い関係の無い、洗剤類、ティッシュ、スポンジ、掃除用品、トイレットペーパーといった、いわゆる日用品の消耗品。これは、安くすればするほど売れます。
でも、それ以外のものになると、基本的には、安いというだけでは、売れるようになりません。
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治療に限らず、消費者が、商品やサービスを選ぶとき、必ずと言っていいほどKBF(購買決定要因)のいくつかが満たされている必要があり、安さはその中の一つの要素に過ぎないので、安くしたからといって売れるようにはならないのです。
これは、治療費の安い治療院だから流行っているとは限らない。そして、治療費の高い治療院だから、閑古鳥が鳴いているとは限らない…という現実を見ても理解していただけると思います。
安くすれば自由診療を受けてくれる患者が増えるはずだ…と言うのは妄想から抜け出し、きちんと儲かる料金設定にすることが大切なんですね。